特別な物、特別な時間

2013 0523 canon l3 elmar50 neopan ss 011

薄く雲がかかった午後。
隙間から段々と陽が差してきて池を覆った。ただなんとなく良いなと思った時にシャッターを切るようになってまだそんなに日が経ったわけじゃない。
まだそれほど暑苦しいという陽気でもなく、かといってフィルムを入れる手が悴むような寒さもないそんな時はアルコールというよりもお茶でも飲んで一息つきたくなるものだ。
辺りを見渡す。それほど特別な何かがあるわけではない。
しいて言えばさっき買ってきたクレープを嬉しそうに頬張る彼女が口についたクリームをぬぐう瞬間位が今のシャッターチャンスだろう。

「食べる前に手を洗ってくる。」そういってどこかへ駈けて行ったので、僕はまた辺りを見渡すことにした。さっきまでの薄暗さが嘘のように段々と明るみを増し、僕に絞りを2つ程閉じさせることになった。
特別に良いこともないけれど、特別に嫌なこともない。この瞬間を収めるにはあまり考えることなく目の前にあるものを撮るのが一番良い。誰かにわかってもらう為ではなく自分の為なのだから。

日傘のおばさん、まどろむおじさん。光が差しかかった池、記憶に無い樹。
どれもこれも僕にとっては特別な物ではなかったけれど、なんでもない特別な時間を僕に記憶させる一枚になった。

手を洗う時、クレープはどうしてたんだろう。